マインドフルネスの実践
「神経症・うつ病撃退大全」シリーズ続きです。
神経症・うつ病撃退大全 – ①ネオ仏法式ベーシックマインド
神経症・うつ病撃退大全 – ②ベーシックマインド強化とマインドフルネスの概要
前回の繰り返しになりますが、とくに不安障害系については”予期不安”が最大の敵であり、これを克服することができれば9割撃退したも同然です。
不安の兆候(誰しも抱くような不安)がやってくると、「ほらきたっ!」とばかりに身構え、不安を見つめてしまいます。
そうして、不安をますます実体化し、さらに予期不安が強化され…というマイナスのフィードバックループに入ってしまうわけです。
つまりは、”ちょっと先の未来”に執われて、”いま現在”を犠牲にしている状況です。
なので、理論的には、意識を”今ここ”に集中させることができれば、予期不安から逃れていくことができる、というからくりになっています。
これがポイントです。
瞑想のために瞑想をやるのではなく、マインドフルネスの実践によって、まさに”今ここ”に意識を向けていくわけです。
悩みのほとんどは、先行きの心配とか過去への過度の執われから来ていますので、不安障害に限らず、悩み全般にマインドフルネスは効きます。
呼吸法とラベリングの実践
これを読みながら、実際にやってみましょう。
姿勢は、背筋を伸ばしているのが理想です。椅子に腰掛けても、床に正座もしくはあぐらでも構いません。
あぐらの場合は、若干、背中がまっすぐになりにくいですので、お尻の下にクッションなどを挟んで調整しましょう。
目は閉じていても、半眼でも、開いていても構いません。
「いま、マインドフルネス瞑想を実践するのだ」と、気をいったん引き締めるのが目的で、それによって眠気を防ぐ効果があります。
慣れたら、「いつでもどこでもできる」状態が理想ですので、とくに姿勢にこだわる必要はないと思います。
あくまで、一日のはじまりの瞑想で、マインドフルな状態のクセ付けをするのがベーシック呼吸法の目的です。
やり方はきわめて簡単で、鼻呼吸における息の出入りに意識を集中していきます。
この際、特別に深呼吸などする必要はありません。あくまで、通常の呼吸です。
「息の出入りに意識を集中」と言われても、コツがよく分からない方も多いと思います。
コツがあります。
息を吸うときに、息が鼻孔に触れていますよね?すーっとやや冷たい感じです。
息を吐くときは、鼻孔はやや温かい感じがするはずです。
ここの鼻孔に息がふれる感覚に意識を向けていきます。
さあ、「息の出入りに意識を集中する」を今すぐやってみましょう。まずは1分間やってみましょう。
…(1分経過)
どうでしたか?
正直、けっこう意識が逸れませんでしたか?
だけど、それでも良いのです。ここで、「あー、意識が逸れて、今日の昼ごはんのこと考えちゃった!」などと自分を責めないでください。
決してジャッジをしない、という方向で行きます。
それでは、気持ちが逸れた場合はどうするのか?
その場合は、まず、逸れていることをシッカリ意識します。
具体的に、心のなかで、「〇〇のことを考えている(思い浮かんだ)」というふうに確認作業をしていきます。
これをラベリングと言います。
ラベリングが済んだら、また呼吸の方へ意識を引き戻していきます。
意識が逸れるたびに、
ラベリング→呼吸へ意識を戻す
を繰り返していきます。
もう一度申し上げますが、「決して、自分をジャッジ(裁く)しないこと」が大事です。
そもそも、心とは色々なことが思い浮かんでしまうものなのです。
そして、実は、「意識が逸れたときはチャンス」でもあるのです。
「〇〇を考えていた」というふうに、ラベリングをすることによって、「想いを対象化する」ことができます。
じつはこれが狙いです。
悩みというものは、その悩んでいる内容と自分があまりに一体化している状態、執われている状態にある、という特徴がありますね。
ところが、ラベリングで、「自分は…〇〇と考えた」というふうに心のなかでつぶやくことによって、心の内容を対象化することができるのです。
自分自身を主体とし、悩みを客体と考えてみると、いわゆる”悩んでいる状態”というのは、あまりに悩みと自分が一体化している状態、主体と客体が渾然一体となっている状態であるはずです。
ところが、科学者が試験管を観察するように、「これは…〇〇だ」とラベリングをすると、
主体(意識)→客体(悩み)
といったふうに、分離させることができます。
この時点でアナタという存在は(ラベリングしているところの)主体の側にはっきり振り分けられた状態になります。
これは逆に言えば、”悩み”は客体側に自動的に振り分けられます。つまり、あなたの外に出ます。”あなたではないもの”になります。
これがポイントなのです。ここにおいて、あなたは”悩み”から離れることができます。
このように、
息の出入りに意識を集中→(意識が逸れたら)ラベリング→ふたたび、息の出入りに意識を集中
を、決めた時間だけ繰り返し続けていきます。
できたら、1日のはじめに最低5分でも実践すると良いです。その後一日の質が確実に上がっていることに気づくでしょう。
なお、呼吸そのものにあまりに集中できない場合は、”呼吸自体をラベリング”してみてください。
息の出入りのときに、
「入った」「出た」「入った」「出た」…
と繰り返していけばよいです。
それから、呼吸に意識を集中すること自体が苦手だ、という方は、お腹か胸に意識を向けてください。
呼吸するときに、お腹かもしくは胸がふくらんだり凹んだりしているはずです。
このふくらみ、凹みに意識を集中してみてください。
いずれにせよ、”つねにマインドフル(=気づいている)である”ことが大事です。
以上が基本の呼吸法です。
マインドフルネス応用
上記に挙げたのは基本の呼吸法です。
これでだいぶ落ち着くはずですが、日常生活に紛れていくと、またしても不安・悩みに囚われていくことがあります。
そういうときは、仕事や生活を一度止めて、1分くらいまた呼吸法をやってみてください。
会社のなかであれば、PCを打つタイピングの手をとめて、やや薄目にして、1分間呼吸法を実践します。
そうすると、落ち着いた状態にほぼ戻れるはずです。
呼吸法の応用としては、歩行瞑想というものがあります。歩行瞑想は文字通り、歩いているときに適した瞑想です。
呼吸のかわりに、地面を踏みしめる感覚に意識を集中していきます。
地面を踏みしめるときに、足の底に圧力がきますよね。その圧力感に意識を集中します。
むろん、意識がそれたら、ラベリングをしていきます。
右足圧→左足圧→ラベリング→右足圧→左圧→…
というふうに。
要は、マインドフルネスというのは、”今ここ”に意識を集中する習慣づけなのです。
たいていの人の意識は”今ここ”にありません。
ちょっと先のことを考えて不安に陥ったり、過去のことを反芻していたりします。
先のことを考えていてもそれは「思考する」とは違いますし、また、過去のことを考えていても、「内省している」とは言えない場合がほとんどです。
思考や内省も立派な瞑想ですし、むしろ瞑想の中級編とも言うべきものですが、これらは”不安・悩み”の状態とはぜんぜん別モノです。
たとえば、ご飯を食べる時、
「白米が口のなかに入って、舌が甘みをとらえる瞬間」を味わっていますか?
そこにしっかり「気づいて」いるのであれば、あなたは”今ここ”に生きています。おそらく、悩みや不安・恐怖からは離れて平穏な心境にいるはずです。
このように、呼吸法以外にも無限の応用余地があります。
- 扉を開ける時、ドアノブのひんやりした感触を味わう
- 洗面で顔を洗う時、皮膚に水がふれる瞬間を味わう
- タオルをつかむとき、そのザラッとした感触を味わう
- シャワーを浴びている時、シャワーのお湯が肩にあたる感触を味わう
などなど、呼吸以外にもじつはいくらでも応用の余地があります。
このように、マインドフルネスを実践していると、前回の記事で述べたように、いわば”心のホームボタン”を手に入れたも同然です。
不安・恐怖・心配事の兆候がでてきたら、そのまま予期不安に巻き込まれ、マイナスのフィードバックループに入ることがなくなります。
兆候がでたら、心静かに呼吸法などで対処できます。
そうすると、不安が仮にやってきても、「私にはホームボタンがあるので、いつでもリセットできる」という自信で、不安そのものに巻き込まれることがなくなります。予期不安が怖くなくなります。
少なくとも目に見えて減ってくることでしょう。
今回、ご紹介したマインドフルネス実践について、「参考書が欲しい!」という方には、『マインドフルネスストレス低減法』(ジョン・カバットジン著)をお勧めします。

以上、今回は、マインドフルネス実践のお話でした。
次回は、仕事を含めた生活リズムでの対処法についてお話いたします。