ほととぎすそのかみ山の旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ

式子内親王
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ほととぎすそのかみ山の旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ

読み方:ほととぎすそのかみやまのたびまくらほのかたらいしそらぞわすれぬ

作者・出典:式子内親王『新古今和歌集』(雑歌上1484)

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高田が考える理想の女性はこのような歌が詠える人です!
永遠のあこがれ。

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今回は古典和歌です。
象徴・技巧的な表現満載の新古今和歌集から選びました。

式子内親王(しきしないしんのう)は後白河法皇の娘で、平安末期〜鎌倉初期の歌人です。

斎院(いつき)として上賀茂神社に仕えていた、ティーンエイジャーの頃を回想して歌われています。

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まず、「そのかみ」=そのむかし、
と、
「かみやま」=神山
で、「かみ」の掛詞(かけことば)になっています。

短歌は「三十一文字」(みそひともじ)とも言われていて、詰め込める情報量が少ないのですが、このような「掛詞」、あるいは「本歌取り」という手法で、複数のイメージをかぶせることが可能なのですね。

それによって、空間的・時間的イメッジを重層的に訴えていくことができる(むしろ、「定型」という制約があるからこそ、詩的起爆力があると思っています)。

「そのかみ山の」という、わずか七文字で、時間→空間の変遷を、映画のシーンチェンジのように移動させています。

前提としては、初句(一句目)の「ほとぎす」の声を聞きながら、回想シーンへと入っているわけです。

「旅枕」は「山」から導き出された言葉ですね。意味的に何かあるというよりも、ここでいったん体言で止めておいて、一呼吸おく。

そして、下の句の情感へ無理なく橋渡ししています。

…ともとれますが、深読みすると、

「斎院としての自分、俗人としての自分、いずれも人生は旅のようなものであった」との感慨がこめられているようにも読めます。

こちらの読みをとりたい。

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さて、下の句。

「ほの語らひし」というと、文字通り、人と人が語り合っているようですが、直接的な語法の解釈としては、「ほととぎすのさえずり」の意なのです。

ただ、やはり、ほのかな恋愛の情が感じられますね。こう、馥郁と、透明感にあふれた匂わせがなんともいえないです。

空ぞ忘れぬ、の「ぞ」の強意(ただし、強すぎない)、情感の盛り上がりが、また、そういった解釈を誘います。

…じつは、恋愛の情、というのは深読みしすぎ?とずっと思っていたのですが、今回いろいろ調べてみると、この歌そのものに元歌(つまり、「本歌取り)があることを知りました。

本歌は、

をちかへりえぞ忍ばれぬ郭公ほの語らひし宿の垣根に
『源氏物語花散里』

ということなので、やはり恋と憧れの情が混じっていると解釈できますね。

うれしい。

***

音韻(おんいん)面でチェックしてみると、五七五七七の冒頭の音が、

「ほ」「そ」「た」「ほ」「そ」

となっています。

この、ため息のような、音のつらなりが、歌の情感をいっそう高めている。

こちらは私の解釈ではなくて、塚本邦雄(つかもとくにお)の解釈です。

見事!

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